書くことに興味がある。
書くことは、自分の仕事でもある。翻訳だから純粋に自分が一から考えた内容を好きなように書くというのとは少し異なるが、毎日、書いている。
書く技術をもっと向上させたいし、向上させなくてはならない。
書くことそのものについても、どこまでも考えてみたい。
人生のテーマの一つとして、書くことをずっと大切にしていきたい。
仕事として書くにせよ、自分のために書くにせよ、人のために書くにせよ。
『こんなふうに、暮らしと人を書いてきた』(大平一枝、平凡社)。
エッセイスト、作家である著者が自身の仕事の日々を綴ったエッセイ。
フリーランスという部分では共通するところもあり、うんうんと頷きながら読んだ。
書くことと自分自身そして読者と真摯に向き合い、失敗を繰り返しつつも前を向いて歩いてきた日々が赤裸々に綴られている。あぁ、そのような日々があったからこそ、いま、このように読者の心にしみいる文章を書くことができるんだなぁと納得する。
特に、「人生には裏テーマを」の項に記された、仕事の大きな転換点となった事件は印象的であった。仕事と家族にまつわる痛みの記憶と、改善のための試み、裏テーマの設定。その裏テーマを心に携えているか否かによって、「選択する言葉も変わり、行間から伝わるものが必ず違ってくる」(p.155)のだという。
仕事そのものに対する姿勢についても大いに学ばせてもらった。
「視野が狭くないか。偏っていないか。もっといいものにするための工夫の余地はないか」(p.211)。「経験にあぐらをかきがちなときこそ、自分を磨き始めるチャンス。いくつになっても、”維持して安定”ではなく、さらに磨き続けて成長をし続けるほうが人生は楽しい」(p.212)。このことを、深く胸に刻みこんだ。いつか自分が仕事をしなくなるその日まで、決して忘れないように。