先日、JAT(日本翻訳者協会) のイベント「PROJECT Nagoya 2024」に参加した。
講演がどれも素晴らしかったうえに、ほかの参加者と交流する時間も設けられているなどとても充実した内容で得るものの多いイベントであった。勇気を出して参加してほんとうによかったと思う。
企画、運営を担当してくださった方々、登壇者、そのほか会を盛り上げてくださった参加者の皆さまに心から感謝している。また、当初はいろいろ不安だらけで行くことをあきらめようとしていた自分の背中を押してくれた人たちにもお礼を言いたいし、そのような協力を得て参加を決めた過去の私にも、ナイスな決断だったねと、現在の私から少しばかり賞賛の言葉を贈りたい。
ここにも、忘れないうちに当日のことを記録しておきたいと思う。ただし、今回のイベントは、録画なしで「ここだけの話」が数多く盛り込まれたものであったため、詳細は控え、簡単な感想の記載にとどめておく。
最初のセッションは、朱宮令奈さん「翻訳者の多角化:”息長く”働く&稼ぐための私の戦略」を聴講した。翻訳者としてのご自身の歩みについて全体像を示したうえで、「自分はこのように取り組んできた。それにより、このような良いことがあった」ということをかなり具体的に伝えてくださり、私にとって参考にしたいことだらけであった。ここまで惜しみなく開示してくださることに感謝しかない。セッションの構成が見事でポイントがわかりやすく、参加者への問いかけなどもあいだに挟まれていてテンポよく進められていった。とても聴きやすくて学びが多いうえ、パワフルなエネルギーをもらえる楽しい講演であった。
午前中2つ目は、中澤甘菜さん「健康で幸せなフリーランス生活を送るために」を聴講した。翻訳者としてご活躍されていながらヨガインストラクターでもあり、さらにそのほかの領域でも精力的に活動されている中澤さんが健康のために取り組んでいらっしゃることが、さまざまな根拠に基づいて示された。なかでもインドの家庭医学「アーユルヴェーダ」のお話に惹きつけられた。本もご紹介くださったので、これを機に学んでみたい。実際に中澤さんの声掛けで少し体を動かしたり呼吸法を実践したりしたのだが、中澤さんの声の優しい響きと自分の心がしずまる心地よさ、それから会場が一体となったような感覚が忘れられない。
午後の1つ目は、戸谷真希さん「地下労働単価からの法人成り、そしてそれからについて」を聴講した。さまざまな苦難を抱えながらもそれを乗り越え、事業を発展させていった道筋が語られた。その成長ぶりはすさまじく、圧倒されてしまう。参加者からの質問が飛び交うなかじっくり話を聞いていくと、成功の裏にはやはりしっかりとした土台作りの過程があったのだなと納得。中国語翻訳をとりまく状況や、ゲーム翻訳のあれこれを知ることができたのも大変おもしろかった。
最終セッションは、上村魁さん「JATとアドボカシー(提言)活動について」。これまであいまいにしか捉えていなかった「アドボカシー」の定義から始まり、外国の翻訳者団体や翻訳業界以外の業界団体の活動状況などが紹介されたあと、最終的にはJATのアドボカシー活動について、参加者からの意見も交えて講演が進められていった。個人ではできなくとも団体ならできることもあるのだと心強く感じると同時に、私もひとりの翻訳者として普段自分だけで抱えている業務上のあれやこれやを皆と共有することが業界をよくするための一助になるのかもしれないと、希望を感じたセッションであった。
昼食とティータイムは交流の時間に設定されており、複数の方とごあいさつさせていただいた。緊張してうまく話せない私とも交流してくださった皆さんに、心から感謝している。出会えたことを大変うれしく思う。ひとりで翻訳作業をしている際に、「いまこの瞬間に○○さんも翻訳の仕事をがんばっている、私もがんばろう」と思える人が増えたのだ。とても喜ばしく心強い。
改めて、PROJECT Nagoya 2024、ありがとうございました。