きのう、アンジェラ・アキさんがNHKの番組『あさイチ』に出演していた。アンジェラ・アキさんのことは、美しい名曲『手紙~拝啓 十五の君へ』以外にあまりよく知らなかったが、ふと興味が湧いたので録画しておいた。
きょうそれを観たところとっても素敵だったので、忘れないようにここに書いておこうと思う。
2014年に日本での活動を休止して渡米し、10年ぶりに国内での活動を再開したアンジェラ・アキさん。渡米したのは、大学で音楽を一から学びなおすため。ミュージカル作品の制作を目標にしていたのだそう。
アンジェラ・アキさんの言葉でまず印象的だったのが、「絵を描くことにたとえると、以前はパレットの上の絵の具が4色しかなく、その4色だけでなんとかして作品を作っていたが、今は40色ある。それを使用していろんなことができるようになった」(記憶から引っ張り出して私の言葉で書いています。ご本人の言葉そのままではありません)ということ。4色から40色、それほどのものを身につけたということが伝わってくる。数多くの色を使いさまざまな方法を駆使して絵を描けるようになるほど、多種多様な作品、おもしろみのある作品をつくれるようになるだろう。自分のやっている翻訳でもそうだ。例えば、自分が使いこなせる言葉や言い回しが多いほど、書ける訳文の幅が広がり、原文の意図を損なわない訳文に仕上げられる可能性も高まるであろう。ほかの仕事でも趣味でもそのようなことは当てはまる。
もう一つ、アンジェラ・アキさんが「40代になって気づいたこと」として、「目標達成=自分の価値」ではないという話にもはっとさせられた。現在は、自分の価値とは「生きていること」だという。ただ生きているだけですごい、みんなそれだけですごいのだということを言っていて、救われた気持ちになった。私は、いまだに「自分には何もない、誇れることがない(=だから自分には価値がない)」と自分を否定しがちだからだ。アンジェラ・アキさんの気づきを共有させてもらい、決してそうではなかったことに気づく。
それから、「ハーフ」にまつわるお話もあった。先日こちらの記事で書いたが、アンジェラ・アキさんも、自分がハーフであることで幼いころからいろいろな場面で大変な思いをしたという。「しんどいが8割、しんどくないが2割」。そんななかで、お母さんがかけてくれた言葉が力強い。「ハーフというと何かが足りない、半分がないということになってしまうけど、そうではない、あなたはダブルだ」。「2つの国、2つの文化を持っていることにいつかよかったと思えるときがくる」。
番組では、音楽を担当(3年半かけて作曲)したミュージカル『この世界の片隅に』に対する思いも語られた。一から学びなおしてミュージカル音楽作家として再始動したアンジェラ・アキさんの作品を楽しんでみたくてたまらなくなった。
テレビ越しだったけど、アンジェラ・アキさん、生き生き、きらきらしていて本当に素敵だった。